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なのなのとりかご @ 普通より遅くてもここがとりかご速報ですPAGE | 264 263 262 261 260 259 258 257 256 255 253 | ADMIN | WRITE 2012.03.11 Sun 03:44:01 ダブルシークレット8初めに見えたのは、見覚えのあるベッドの天蓋。
初めてここへ来た時に見たのと同じ、眠っていたのはアスランのベッドだった。 まだ少しだけ、頭が重たい。 「気が付いた?」 静かな声がして顔をあげると、ベッドの柱にもたれて佇む、この部屋の持ち主の姿があった。 柔らかな白いシャツで腕を組んでいて、静かな眼差しで見下ろしていた。 「……えと」 前後関係が思い出せずに困ってしまったが、いつもアスランは何も教えてくれない。 こんな掴みどころのない眼差しに晒されると、居心地が悪くて、有る事ない事喋ってしまいそうになる。 プレッシャーで、胃が痛くなりそう。 本当は怒りたいのを、我慢しているのではないだろうか? 迷惑に思っているのは、間違いないだろう。 それとも、興味がないのかもしれない。 何故なら、目の前にいるのにキレイな緑色の瞳は、いつもキラの知らないどこかを見つめている。 アレックスと同じ顔だからインパクトは薄いが、やはり違う。 二人の見分けが付かない皆が不思議なほど、キラには分かる。 この間帰って来たとき、『見分けが付かないからコツを教えてくれ』とパニクるシンに『アスランはピカピカのボンボンショコラだけど、アレックスはツヤツヤのザッハトルテっぽい』と説明したのだが、全く分かって貰えなくて、反対にキレられてしまった。 けれど本当は、もっと簡単に見分ける方法がある。 アレックスは作り笑いが上手だが、アスランは、ほとんど笑わない。 厳密にアスランが笑っている記憶がキラにはないのだ。 ――楽しくないと笑えない。 アスランは、きっと楽しくないのだとキラは思う。 助けて貰ってばかりだし、優しいことも知っているが、その優しさは何故か掴みどころがなくて、ひどく心もとない。 アスランは優しいけれど、たぶんきっとひどく疲れていて、多分、隙のない見た目よりもずっと脆いのかもしれないと思ったことがある。 はらりと頬にかかる紺色の髪が、余計に顔色を悪くみせているのかもしれない。 眉間に皺が寄っていて、とても疲れているように見えてしまい、いつもキラは緊張してしまうのだ。 最近、また新たに何か困らせたり、ワルイコトをしただろうかと、毛布の下で思い巡らせかけて――コンマゼロで、その理由にヒットしてしまい、一気に目が覚めた。 ――そういえば、窓から侵入したのに、どうしてベッドにいるんだろう? 「って……ぇ?」 瞬間、大きなスミレ色の瞳がピクンと見開かれた。 思わず悲鳴をあげかけた口を両手で押さえるのが精一杯。 確かアスランの部屋に忍びこんで、盗み聞きをしたのだった。 さらにそのまま眠りこんでしまってベッドを占領してしまっているのだとしたら、アスランが疲れてしまうのも納得する。 ――叱られるかな……盗み聞きしたの、バレたかな。 嫌われるのが怖くて頭を抱えてみたが、いつまでもそうしていられるわけはないのは、ちゃんと知っていた。 シーツの影から盗み見たアスランからは、全く怒気は伺えなかった。 いつもと同じ、静かな、そして無欲な顔をして少し怖い。 「キラは、そこの床の上に倒れていたんだよ」 巣から落ちた小鳥を拾ったような調子で指差すと、アスランは、そのままキラの肩にポンと触れた。 軽く触れられただけなのに、ひどくビクつく自分をどうにかしたかったが、キラは何も出来ない。 「あ、あの」 とりあえず謝ろうとしたが、声が震えた。 「色々あると思うけど、あんまり無理しないように」 もう一度ポンポンと、あやすように叩かれて、逃げる事も避ける事も出来ずにキラは固まっていた。 ただ触れられた場所が温かくて、とても大切にしてくれている触れ方だと分かった。 こんな風に触れてくれるのに、アスランは遠い場所にいる。 拾って貰って置いてくれただけで感謝しているのに、それ以上を望む自分が、キラは嫌になる。 アスランは優しい。 みんな優しい。 でも、キラはひとりぼっちだ。 ギクシャクと身体を起こし、ベッドの上でペタンコ座りになると、純血の猫耳はひどく小さくて怖いほど。 この小さな存在に、プラントのコロニー数基分の価値があると言う。 そんな事など何も知らないキラは、華奢な身体で項垂れながら小さく息を吐き出した。 ――アスラン、怒ってないのかな。 誰にも聞き取れないくらい小さな声で呟いてみたが、まだ顔をあげる勇気が出ない。 ――でも、キラがここにいない方が、アスランは嬉しいんでしょ? 問えない言葉が頭をかすめるたびに、泣きそうになってしまう。 キラにはよく分からない。 本当の事は何も、誰も直接キラには伝えてくれないからだ。 そのまま、アスランは黙りこんだままで、キラは俯いたままだ。 「窓の外に踏み台が積んであったとアデスが言っていたけど、キラがしたんだよね?」 静かな問いに、キラはますます深く項垂れた。 「とりあえず、窓からはやめてくれ。怪我をされてはかなわないから」 「……ごめんなさい」 「謝らなくていい、かなりシンの声が響いていたらしいから……キラにも心配させたんだろうね。こっちの不注意で悪かった」 困ったように目を伏せるアスランに申し訳なくて、キラはプルプルと首を横に振った。 アスランは何も悪くない――それはキラにも分かっていた。 けれど、キラにここにいて欲しくない。 それが、どうしようもないことなのも、ちゃんと分かっていた。 「それで……」 アスランは、一度口ごもった。 「それで、率直に聞くけど――キラは俺たちの話をどこまで聞いただろうか」 「え? ……あ」 あまりに直球すぎて思わず顔を上げてしまったキラは、慌てて俯いた。 頭が重くなって何も考えられなくなるほど、たくさん聴いてしまった。 それはみんな、キラが知らない方が良かった事なのかもしれない。 「怒らないから言ってごらん?」 問いかける感情のないエメラルドの瞳は、とてもキレイだけれど怖い。 「あ、あの……アスランが怒ってるとこまで……かな?」 どう答えていいか分からずに、キラはへらりと笑ってみせたが、怪訝な顔をされてビクリと固まった。 「俺は、あのとき怒った記憶がないんだけど」 「え? え? じゃ、じゃあ……シンくんが、えと、シンくんは怒ってたから……うん」 キラは必死に言い訳を探した。 緊張のせいか胸が音を立てて鳴って、顔が赤くなってしまい泣きたい。 「あは。……間違っちゃったのかな」 モゴモゴと口ごもり、すでに涙目になってしまった顔を隠したくて、焦って両手で猫耳を握ってしまった。 キラの猫耳。 本当は、これがついているから。 だから、みんなを困らせる。 みんなと同じになれない。 俯いたまま猫耳を握ると、ポツリとシーツに涙がこぼれて落ちた。 「……キラ? どうしたんだ」 慌てた声で無理やり顔を上げさせられそうになって、キラは身体を固くして俯いたが無駄だった。 力や体格が違い過ぎるのだ。 無理やりに仰向かされて、涙が飛び散った。 それなのに、また溢れた涙でアスランの顔が歪んで見えなかった。 叱られていないのに、どうして泣けてくるのか分からない。 緊張しすぎているのかもしれない。 「だいじょうぶ、ちょっと、なんか変なの」 笑おうとした次の瞬間、ぎゅうと抱きしめられて痛いほど胸に押し付けられた。 頭があげられない。 そして、そのままパサリと布に包まれて、目の前が真っ暗になった。 「しばらくの間じっとして、声を立てないでくれ」 簡潔なアスランの声とともにベッドのマットが遠くなり、ふわりと抱き上げられたのが分かった。 見えないそのまま、キラは前へ前へと進んでいく。 大きなアスランのストライドは、迷う事なく床を蹴って、空気が変わるのが分かった。 屋敷の突き当たりまで行き、外へ出たのだ。 ――捨てられるのかもしれない。 キラは、抱き上げられた腕の中で身体を丸めて泣いていた。 ------------------------ ここ数日、なんだかPCがヤバイ>< なんか、重くなって上手く動かないの。 PR CommentsComment Form |